【掌編小説】想いが届かなかった夏、壁に残った球音|元宝 (一分間で学ぶ 成功者の教え)
 蝉の声がテレビの歓声と混ざり合っていた。画面の中では、汗にまみれた高校球児たちが、まぶしいほどの真剣さで白球を追いかけている。僕はテレビの前に座り込み、まるで自分もその一員であるかのように息を詰めていた。  いつか、あの場所に立つ。そう信じて疑わなかった。  試合が終わると、テレビを消し、黙ってグローブを手に取る。外に出ると、まだ熱を持っているコンクリートの壁がぼんやりと赤く染まっていた。  僕は一人で、ただひたすら壁に向かってボールを投げる。パシン、という音だけが世界に残る。誰かに見せるわけでもない。褒められることもない。それでも、ボールを追い、拾い、また投げる。  夢に届く
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