政治や社会に蹂躙されてきた人々への圧倒的なオマージュとして新国立劇場に愛と哀しみの鐘を鳴り響かせた…★劇評★【舞台=レオポルトシュタット(2022)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
かつて私が世界的演出家、蜷川幸雄のもとに毎月インタビューに赴き、その時々に手掛けている作品や、演劇の核心について語ってもらうという特別企画を続けていた2009年、蜷川は3時間強ずつの三部作、つまり9時間を超える上演時間の舞台「コースト・オブ・ユートピア ~ユートピアの岸へ~」を演出するという気の遠くなるような創作作業に臨んでいた。「おもしろいよ、あなたも観に来なきゃダメだ。観たら私の共犯者になるけどね」と、ニヤリとした。実際に見てみると、近代から現代へと向かう世界の歴史の一断面を一字一句省略せずに全力疾走で読むような不思議な高揚感と達成感があり、はっと自分に気付いた時には既に7時間が
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