遠藤周作と歩く「長崎巡礼」
「一枚の踏絵から始まる旅もある」
かれこれ四十年ほど前の、初夏のとある夕暮、遠藤周作は、初めて訪れた長崎
の街を格別どこに行くあてもなく、歩いていた。大浦天主堂前の人混みを避け、
ぶらぶらするうちに、十六番館という木造の西洋館に行き着く。時間つぶしに中
に入る。そして、一枚の踏絵を見た----。
薄暗い館内でしばらく、じっと立っていたのは、踏絵自体のためではなく、そ
とを囲んでいる木に、黒い足指の痕らしいものがあったためであった。足指の痕
はおそらく一人の男がつけたのではなく、それを踏んだ沢山の人の足が残したに
ちがいなかった。(『切支丹の里』より)
踏んだのはどんな人たちだった...
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