伝説的世界から逃れたはずの私たち現代人の心をもう一度奥底から揺り動かすようなエネルギーにあふれた作品…★劇評★【舞台=常陸坊海尊(2019)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
武蔵坊弁慶とともに義経の都落ちに同行しながらも、義経が追討軍に追い込まれた衣川の戦いに直前で参加せず、「裏切り者」の汚名を受けた常陸坊海尊(ひたちぼうかいそん)。その後自らの罪深さを悔いながら放浪した後、不老不死となって生き延び、400年ぶりに姿を現しては源平合戦や義経について語り始めたという海尊の伝説は東北地方各地に残っており、文化人類学上の研究対象としても興味は尽きないが、そのころの海尊は「裏切り者」のレッテルを貼られた人物であると同時に、困った人が助けを呼ぶ「仙人」のような存在でもあったというから、面白い。日本における罪と罰の問題も内包しており、その罪が堆積あるいは熟成されるこ
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