女性が成長の過程で歩くことになる人生に流れる、しっかりと体温の感じられる温かみが人の幸せとは何かを浮かび上がらせる…★劇評★【舞台=正造の石(2019)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
明治時代に発生した足尾銅山鉱毒事件を天皇に直訴しようとするなど、被害者の救済に尽力した衆議院議員、田中正造はあまりにも有名だが、劇団民藝が上演している舞台「正造の石」は、田中の伝記ではない。田中の計らいによって、鉱毒に苦しんだ谷中村から東京の婦人解放運動家・福田英子の家に住み込みのお手伝いさんとして入った一人の農民出身の若い女性を通して、足尾銅山鉱毒事件やその周辺の人々、そして当時の社会主義運動家たちの姿を描くヒューマンドラマ。底辺から時代を見るという透徹したアプローチの視線が、農民や鉱毒被害者たちの苦悩と、国家というものの欺瞞をえぐり出すことにつながっており、女性が成長の過程で歩く
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