こんなに日常が心に染みる芝居もない。相反するものを明滅させながら深まっていく物語に確かな手触り…★劇評★【舞台=母と暮せば(2021)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
演劇空間は観客にとっては非日常の空間である。幽霊が登場するのも、科学で証明できない以上、非日常に違いない。なのに、こんなに日常が心に染みる芝居もない。こんなにも大切にこんなにも丁寧に積み重ねてきた日常を一瞬にして奪う戦争という悪魔のような所業。日常が表すその非日常の悲劇-。絶賛された2018年の初演以来、初めての再演が行われている舞台「母と暮せば」で母と息子の魂の邂逅を演じている富田靖子と松下洸平のあくまでも自然なふるまいが逆に私たちの心を震わせ、日常と非日常の空間を分かちがたいものにする。演出の栗山民也が稽古場で口にした「正体不明の分からないものに毎回(毎公演)出合わなければ(いけ
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