柿 | コレクション | ポーラ美術館
写生を重んじた古径の作品には、身近な花や果実を描いたものが多く、なかでも柿の実を好んでいたようである。本作品では、柿の木の一部分をクローズアップした構図で、枝は下方から上方に向かって伸び、よく色づきぽってりと実った柿の実は、ちょうど採り頃食べ頃といった趣である。柿の実に細かな傷を描きこむ写実性は、枝の肥痩や葉の照り、虫食いにまで至り、古径の力量を伝えている。浮かび上がるような柿の実の立体感は、迷いのない輪郭線によって背景と区切られているのだが、まるで溶け込むように存在感をなくす線描の妙には驚かされる。それは、古径の語る線描についての理念に即している。「線としていゝものは、画面に独立して、飛び離...
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