弾けんばかりの躍動感と繊細な愁いのバランスが心を震わせるに十分…★劇評★【ミュージカル=モーツァルト!(古川雄大・涼風真世出演回)(2021)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 才能が肉体ではなく精神に宿っているのだとしたら、それはその人物の才能と言えるのか。その答えは絶対的に「言える」だ。自堕落な肉体としての自分を覆い隠すほど高レベルな作品や成果を才能から享受しているのだとしても、それは誰にも分からない。「才能」というものに実体はなく、その人物がもう一人の自分を自分の中に創り出しているだけかもしれないし、すべては精神の中の物語だ。しかしながら、その精神と肉体、あるいは実態と才能の分離を物語の中に組み込んだ時、モーツァルトの人生はそう読み解くことでしか理解できないような説得力を持つこともまた確かだ。象徴的なかたちでこの考え方を採用したミュージカル「モーツァル
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