いずれ春永に|狩野 都
借りたままの本が何冊か本棚に入っている。どれも最近借りた物ではなく、10年から20年は経っている。 『いずれ春永(はるなが)に』ということばがある。 能か狂言で使われる言葉で『再び春が巡ってくるように、いつかまたお会い出来ることを願っています』という様な意味。ずっと以前、三島由紀夫の随筆で読んだ。 再会を無理強いしていない、でも十分にこころが伝わるような良いことばだなとずっと覚えていた。そんなふうに言いたかった場面があったのだけれど、その頃の私には似合わなかったから言えなかった。 「恋愛の別れ」ではない、大切な友人との別れ。 再び会えない感じが漂っていて、でもそれについて話す
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