「精神の時代」象徴する家族の愛憎劇を最高限度にまで振り切った会話劇として昇華させる仕上がり…★劇評★【舞台=夜への長い旅路(2021)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
精神分析への理解が進んだ時期だからというわけではないが、20世紀は「精神」の時代である。娯楽主義からの脱却を目指してリアリズムを採り入れ始めた20世紀前半や中盤の米国の演劇において、人間の精神の逼迫や荒廃が戯曲の材料として注目されたのはむしろ自然な流れである。ユージン・オニールしかり、後のテネシー・ウィリアムズしかり、精神的に追い込まれていく登場人物の描写を通して、現代人の精神性をリアルに描き出す傑作を産む作家が次々と現れるようになった。中でも家族との関係性の中にそうした精神の揺れを採り入れた作品は主流となり、オニールの「夜への長い旅路」は、その最高到達点と言ってもよい作品だ。日本を
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