【連載小説】きみの星には嘘がない 第9話 射手座の遠い矢|元宝 (一分間で学ぶ 成功者の教え)
「天文対話室・エフェメリス」の窓は、今日は珍しく全開に放たれていた。 三階の窓から入り込む風は、都会の埃っぽさを含みながら、どこか遠い場所の匂いを運んでくるようだった。カーテンが大きく翻るたび、デスクの上に置かれた世界地図の重しがカタカタと音を立てる。 「……落ち着かない部屋ですね」 そう言って、眼鏡の奥の神経質そうな瞳を細めたのは、白田一馬(しろた かずま)、五十二歳。 国立大学で中世史を教える教授であり、数々の学術書を出版している、いわゆる「成功者」だ。 非の打ち所のない経歴、穏やかな家庭、そして定年まで約束された椅子。しかし、彼の指先は、手持ち無沙汰に古い革の鞄の端を掴んで
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