【連載小説】きみの星には嘘がない 第10話 山羊座の重い冠|元宝
「天文対話室・エフェメリス」の夜は、他のどの時間よりも静かだった。 窓の外には都会のビル群が、まるで巨大な墓標のように冷たい光を放っている。部屋の中は暖房が効いているはずなのに、どこか凛とした、冬の早朝のような空気が張り詰めていた。 「お呼びでしょうか。あ、いえ、予約の時間でしたね」 朔太郎は、今日は黒いタートルネックにグレーのツイードジャケットを羽織り、真鍮の重厚な定規で星図の角度を測っていた。デスクには、湯気の立っていない、漆黒のブラックコーヒーが置かれている。 「どうぞ。そこへ。今日は『重力』が一段と強いようです。あなたの歩く音だけで、このビルの強度が心配になりましたよ」
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