森鴎外 高瀬舟
高瀬舟 森鴎外  高瀬舟(たかせぶね)は京都の高瀬川(たかせがわ)を上下(じょうげ)する小舟である。徳川時代に京都の罪人が遠島(えんとう)を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷(ろうやしき)へ呼び出されて、そこで暇乞(いとまご)いをすることを許された。それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪(おおさか)へ回されることであった。それを護送するのは、京都町奉行(まちぶぎょう)の配下にいる同心(どうしん)で、この同心は罪人の親類の中で、おも立った一人(にん)を大阪まで同船させることを許す慣例であった。これは上(かみ)へ通った事ではないが、いわゆる大目に見るのであった、黙許であった。  当時遠島を申し渡さ...
www.aozora.gr.jp