対立と融和の米国史にあふれる同時代性。石丸幹二・井上芳雄・安蘭けいが綴る一大絵巻…劇評★【ミュージカル=ラグタイム(2023)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 まだジャズが成立する前に、黒人たちが模索していた音楽がある。それは「ラグタイム」。さまざまな方法で裏拍を強調することである種のずれを生み、独特の浮遊感を聴く者に感じさせる手法で、その後のジャズの成立、隆盛にも大きな影響を与えた。まるでこの手法を使ったような方法で、白人、黒人、移民と米国を構成する3つの要素が絡み合いながら現代へと変遷してきた歴史を綴った一大叙事詩のミュージカル「ラグタイム」がカナダでの世界初演から実に27年にしてようやく、日本人キャストによる日本初演として上演されている。移民の苦闘や、黒人の闘争史として描かれることも多いこれらの歴史をはじめからどの視点も漏らすことなく
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