キミの寝顔を見て、泣きたくない。|三條 凛花
手渡されたのは、ぱんぱんにふくらんだ封筒だった。渋々アイロンを置く。 「ねえ、なんでままはおへんじくれないの?」 五歳の息子が口をとがらせる。 どきりとした。夏休みは毎日いっぱいいっぱい。子どもとゆっくりすることができていない。──それはわかっていた。 その日の”おてがみ”は力作だった。 八歳長女の封筒には、猫の形の折り紙と、手作りの便箋にメッセージ。息子の封筒には、二十機もの紙ヒコーキがびっしり。 「めっちゃじかんかかったんだからね!」 息子は誇らしげに笑う。 お昼をたべたら、”おへんじ”書こう。口元が綻ぶ。 ──でも、書かなかった。 洗濯を干して
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