どろどろした闇の切れ味と弾けるような祝祭感がない混ぜになった得も言えぬ魅力を放つ作品となってあの名作が再演を果たした…★劇評★【舞台/音楽劇=天保十二年のシェイクスピア(2020)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 シェイクスピア劇と言えば、演劇にあまりなじみのない人にとっては少し前までは「分かりにくいもの」の象徴だった。物語を理解するにはヨーロッパの歴史のある程度の知識が必要だったし、当時にしか通用しない表現も多い。文章は流麗だが、挿入句が多かったり、修飾が過剰だったり、観客の頭にすんなりと入ってこないこともありがち。俳優にとっても、独特の謳うような節回しは慣れないと大変で、そもそも声の出し方が違うという人もいる。逆にそんな多くの障壁があることは、シェイクスピアをありがたがる人たちにとっては、それが分かる自分たちは「優秀」ということになり、特別な教養だとして必要以上にありがたがった。今でこそさ
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