【掌編小説】「川沿いの歩道を歩くカモ夫婦」から教わった、不器用な僕らの進み方|元宝
都会の朝は、いつだって不機嫌なエンジン音と、誰かの焦燥感で満ちている。 私もその一人。駅へと急ぐ私の視界に、あまりにも「場違いな二人」が飛び込んできたのは、春の終わりの少し肌寒い午前中のことだった。 コンクリートの舗道を、ぺちゃ、ぺちゃ、と小気味よい音を立てて歩く二羽のカモ。 右側にいるのは、首筋の緑が鮮やかな旦那さん(勝手に命名)。左側に少し遅れて歩くのが、控えめな茶褐色の奥さんだ。 彼らの足取りには、迷いというものが一切ない。 「ねえ、今日はこっちのルートで合ってる?」 「ああ、俺の野生の勘を信じろ」 なんて会話が聞こえてきそうなほど、彼らは堂々と、そしてシュールに、都会のアス
note.com