人を愛す風来坊~漫談家ナオユキ~|チョク・スエヒロ
ステージの上に、センターマイクが物言わず悠然と立っている。 時間になると、どこからともなく音楽が聞こえてくる。アンニュイで、どこか物悲しさを漂わせるアコーディオンの音。その音の中、一人の男がゆっくりペタペタと歩いてステージへと上がってくる。そうか、この音は出囃子か。 出囃子の中出てきた男は、中背で、頭にハンチング、程よい口ひげをたくわえ、着の身着のままというような味のあるラフな出で立ちで、表情も歩みも淡々と、センターマイクへと向かっていく。 マイク前に立つと、ステージ・客席の中に流れる空気に身を任せ揺蕩うように市井の風景を訥々と語り始める。普通生きていると、見落としてしまうような
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