【連載小説】数よ、わたしを導け:「5」の停滞|元宝
 ドアのベルがどこか迷うような微かな音を立てて鳴った。  入ってきたのは、灰色のパンツスーツに身を包んだ女性だった。肩にかけた革のバッグのストラップを両手で固く握りしめ、周囲の空気を探るように視線を泳がせている。  「長谷川(はせがわ)と申します。……よろしくお願いいたします」  長谷川ゆかり、三十九歳。市役所で生活福祉課の職員として十五年間勤め、安定した職と周囲からの厚い信頼を得ながらも内に抱えた息苦しさに耐えかねて数縁庵の扉を叩いた人物だった。  丸テーブルについた長谷川は、背筋を伸ばして座りながらも、どこか足元が浮いているかのような落ち着きのなさを漂わせていた。  「長谷
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