戦地に吹き抜ける風が私たちの心の中にもたらす得も言えぬ叙情の思い…★劇評★【舞台=風博士(2019)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
「風」と聞くと、どんな空でも吹き抜けることができる自由なイメージや、風まかせとか風来坊という言葉から来る気ままで柔軟なイメージ、そして、国境や地上の形状に左右されない超越したイメージが思い浮かぶ。そのせいだろうか、このシス・カンパニー公演「風博士」は、戦争という最も過酷な状況の中で死と隣り合わせに生きている人々を描いているのにどこかさわやかで生命力さえ感じさせる。それは果たして悟りか諦観か覚悟か。軽やかで自由な雰囲気は、人間や国家の矛盾が渦巻く大陸の現実を飛び越えて、私たち観客の心の中に得も言えぬ叙情の思いをもたらすのだった。演出は寺十吾(じつなし・さとる)。音楽は坂本弘道。(写真は
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