『講和の旗が翻るとき』 終章|Jin Tonic
📘 終章「新しい旗」    年が明けた。  昭和二十五年の正月、東京は珍しく晴天が続いた。だが、霞ヶ関では年始早々、**“内部情報流出事件”**が静かに広がりを見せていた。  軍政庁第十局の鷲尾圭一――行方不明。  正月三が日を過ぎても、出勤せず、電話もつながらず、住居も無人。軍政庁の内局では報道を止め、内部調査という名目で、緘口令が敷かれていた。    その頃、圭一は――山形の農村にいた。  早乙女誠の古い人脈を辿り、彼がかつて記事を書いた山間の村に身を寄せていた。偽名で、農作業を手伝いながら、夜になると原稿を綴っていた。  「講和という名の沈黙」  それが彼の、は
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