特別な夕方に反芻するのは、シンボルツリーにいざなわれた"ひみつの花園"|三條 凛花
家を出る前、怪しいなとは思っていた。 南の空の一部だけに、妙に濃く、黒く、もくもくとした雲が湧いていた。 まあ大丈夫だろう。 自転車のペダルを漕ぎ出した。マフラーは娘に貸してしまったから、すぅすぅと風が吹き込んできて首元が寒かった。 習い事の入口まで子どもたちを送り届けたわたしは、そこから数分歩いてカフェにやってきた。 きょうは振り替えレッスン。 いつも家で夕飯をつくっている時間帯に外にいるのが不思議な感じがして、そわそわしながら店の扉をくぐった。 いつも混みあっている店内が、がらんとしていた。 17時と18時のあいだという、曖昧な時間のせいだろう。 いつもと違う
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