西部劇の町に響く運命論の鐘。キャスティングにも仕掛けがあり、油断ならないたくらみに満ちた作品に…★劇評★【舞台=広島ジャンゴ2022(2022)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
人にはそれぞれ事情がある。そのことを分かってもらうために、その人が愛してやまない世界観を借りて、物語として経験してもらう。そんなシンプルな組み立てなのだが、それが現代の広島の牡蠣工場と、西部劇の街「ヒロシマ」とを交錯させながら描かれるものだから、思考が徐々にねじれていく。まるで先端が螺旋階段のようになったきりもみを頭にねじ込まれているように。やがてその事情とやらは、運命論の鐘を鳴らし始め、登場人物たちを深刻なるつぼのなかへと追い込んでいく。2016年に劇作家・演出家の蓬莱竜太と広島にゆかりを持つ演劇人たちが創り出した世界を発展させ、東京・渋谷のシアターコクーンという現代演劇の聖地で、キ
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