ハッピーエンドを続けるために”小さじ1”の声を。|三條 凛花
「──ただいま」 誰にともなく声を落としながら、寄りかかるようにしてドアノブを掴んだ。 ドアポストにはチラシが数枚溜まっている。 家に戻るのは5日ぶりだった。 日づけが変わる少し前に、ようやく着いた。 三半規管が弱いらしい。 新幹線で酔ってしまい、ホームのベンチで休むうちに遅くなった。 築30年のマンションはロの字型の建物で、中庭にひょろりと幹の細い木がある。その丸っこい葉っぱに、雨粒がしゃらしゃらと弾ける音だけが響いていた。 軋んだ音とともに扉を開ける。 廊下のやや暗めの光が、ワンルームの冷え切った玄関の床を橙色に染めた。 濡れた傘を床に置く。 黒のパ
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