【連載小説】数よ、わたしを導け:「1」の影|元宝
 「失礼します……」  開いたドアの隙間から滑り込んできたのは、ひどく張り詰めた空気をまとった男性だった。  白のボタンダウンシャツに、皺ひとつないチノパン。一見するとスマートなビジネスパーソンだが、その肩は不自然なほど怒り、浅い呼吸を繰り返している。  「ようこそ、数縁庵へ。どうぞお掛けください」  文江の穏やかな声に促され、男性は丸テーブルの椅子に浅く腰掛けた。  彼の名は尾形航平、三十三歳。事前のカウンセリングシートによれば、大手広告代理店を先月退職し、現在は個人事務所を立ち上げて独立する準備を進めているという。  (なるほど。僕と似たタイプの人間か)  憐は尾形の生年
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