変わる価値観の中で今もまだ手探りで生きている私たちは主人公ヴァイオレットの姿に何かたくさんのものをもらっている…★劇評★【ミュージカル=VIOLET(唯月ふうか・稲田ほのか出演回)(2020)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 ひとり旅は人を成長させるというが、それは何も観光地の知識を増やしたり乗り物の乗り方を覚えたりするからではない。交わらざるを得ない人々との幾重にも織り込まれた会話によって、世の中には自分の知らない価値観があることを知り、自分という存在を客観視することができるようになるからである。しかも、旅の主役が若い娘で、その旅が障がいへの偏見と人種差別がまだ色濃く残っていた時代の米国の長距離バス「グレイハウンド」での旅ともなると、出会う人々の多様性は半端なものではない。もちろん、若い娘に対して親切な人もいれば、はじめから下心丸出しの人もいる。そんな場所に身を置くことを決意させた自身の覚悟は心強いが、
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