黒木華の情感のこもった演技と中村倫也の誠実な表現によって忘れがたく胸を打つ作品に…★劇評★【舞台=ケンジトシ(2023)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 私は頭の中に文章が浮かんできたときにはそれを書きとめておいて、いつかそれが小説かなんかのかけらのひとつにならないかなと思ったりもしているのだが、宮沢賢治本人やその作品を題材にした戯曲を観た後は、やたらとリズミカルでなぞめいた言葉が頭の中からあふれだしてくる。「たきなそ たきなそ」、ある時飛び出してきた言葉は、呪文のようで、暗号のようで、そして祈りのようでもある。劇中にそんな言葉は出てこないのになぜだか賢治の詩的なリズムやセンスに心が痛く刺激されて、何かが生まれ、それが聞いたこともない言葉に変換されて頭の中に噴出してくるのだ。読んだ者、観た者、聴いた者にそんな作用を及ぼすのは、文章がう
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