すべてを覆いつくすのがあの人類の悲劇と分かっていても、一瞬一瞬を懸命に生きた人間の希望の息づかいがある…★劇評★【舞台=紙屋町さくらホテル(2022)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
どんなに過酷な状況に追い込まれた登場人物たちを扱っていても、井上ひさしの作品にはその一瞬一瞬を懸命に生きた人間の希望の息づかいがあるし、そこに付随する要素すべてをエンターテインメントに変えることができる井上の稀有な才能が見える。こまつ座第142回公演「紙屋町さくらホテル」は特にその才能が発揮された作品であり、観客は演劇論から演技論、果ては宝塚歌劇論まで語られるお芝居のうねりのきいた波に心地よく乗りながら、いつのまにか難しい議論のど真ん中に引きずり込まれていることに気付く。その物語のすべてを覆いつくすのが、あの人類の悲劇だと分かっていても、この議論の先に彼らの明日も見えていると信じたく
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