ニセモノドリア ─ 崇 ─|三條 凛花
冷めきった惣菜の蓋を開けた。 帰りがけに閉店間際のスーパーで買った「まんばのけんちゃん」には、値引きシールが貼られている。 豆腐が青く染まっていた。まんばはアクが強いと聞いたことがある。そのせいだろうか。頭の中に、声が蘇る。 「ああ、ごめん。失敗しちゃった。……下ごしらえをきちんとしなければいけないみたい」 おっとりした声。 そう話してくれたのは妻だっただろうか。 口元まで運んだが、味わうことなくパックに戻した。箸を置く。給食で出たなつかしい味を都内で見つけられたうれしさから、即座にかごに入れてしまったが、どうにも食欲が湧かなかった。 ネクタイを緩め、ふっ
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