同じ地平で苦悩と希望を感じ取ろうとする観客たちのより深みを増した視線を引き出した藤田俊太郎演出。忘れ難い作品に成長…★劇評★【ミュージカル=手紙(2022)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
罪は消えない。社会的には服役や補償などによって一見消えていくように見えるが、心の中ではかたちを変えながらも残り続ける。特に加害者と被害者の間ではいつまでも不安定なバランスで揺れ動き続ける。それは悲しいことではあるが、赦しや反省といったおぼろげなものとは無関係に、厳然とした現実だ。そしてそれは皮肉なことに、罪に直接向き合っている加害者よりも、加害者の家族や関係者により深刻なかたちをとって降り注ぐ。より不条理に、より不誠実に。2003年の発表の直後から大きな反響を呼んだ東野圭吾の小説「手紙」を、人間の感情を昂らせ揺り動かすミュージカルという表現手段を用いて舞台化したのは、大ヒットアニメ「
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