芝居や演技が愛すべきものであることを示すとともに、演劇がさまざまな思いの突破口、噴出口になることを示した力作…★劇評★【舞台=連鎖街のひとびと(2023)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 いろんな災厄や災害があった時、もっとも早く再開される、あるいはその状況を受けて新たな作品が世に問われるのは演劇だ。新型コロナウイルスの時代には「不要不急」のものとして扱われることも多かった演劇だが、有史以前から、演じる者と観る者さえいれば、即成立するのが、演劇であることを考えれば、立ち上がる速さを演劇が持っていることは当然のことである。国家によって入植をあおられたあげく、いざ戦争に負けてみると国家からも占領軍からも徹底的に虚無的な存在として扱われた日本人たちにとって、災厄はこれから訪れるシベリア送りや内地引き揚げの苦闘だったが、終戦直後のエアポケットのような時期にそれでも演劇に取り組
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