人々の心に刻み付けられた記憶を怒涛のように呼び覚ます圧倒的な言葉の力…★劇評★【舞台=フェイクスピア(2021)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 言葉がこれほど軽んじられている時代もないだろう。フェイク(偽物)であることがこれほど力を持った時代もないだろう。かの国の愚劣な王に振り回され続けた4年間を終えて、その兆候は少しは改善するかもしれないと期待した人も多かったはずだが、個人と個人を細胞のように結び付け、社会の有機的なネットワークを形成していたはずの言葉はその力を失い、人々もまたその言葉を信じなくなった。一度離反したその信頼は容易には戻ってこないということなのだろう。世界と同様に日本でも顕著になった「言葉が空虚になった時代」の出現は、言葉を駆使してこの国の理(ことわり)を解き、言葉が生来持つ生きるための力を私たちに浴びせ続け
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