【掌編小説】白い地図を書き換える ~ガンという病との向き合い方|元宝 (一分間で学ぶ 成功者の教え)
窓際から差し込む午後の光は、まるで精巧な偽物のように白く、無機質だった。 「じゃあ、お先に」 そう言って、酒井は拍子抜けするほど軽い足取りでオフィスを去っていった。デスクに残されたのは、長年使い込まれて端が擦り切れたマウスパッドと、彼が飲み干したブラックコーヒーの空き缶だけだ。 酒井が会社を辞めた理由は、周知の事実だった。一年前に宣告された「癌」。抗がん剤治療を続けながら仕事をこなしていたが、ついに薬が「牙」を剥くのをやめたらしい。耐性ができ、効果が薄れた。彼は次の治療法を探すため、文字通り命を懸けた休暇に入ることに決めたのだ。 エレベーターが閉まる瞬間、彼が見せた微かな微笑み
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