せりふひとつひとつを観客の心の底に着実に沈めていくような静かな力強さと不安な現代社会ならではの浮遊感がないまぜに…★劇評★【舞台=The last night recipe(2020)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 幸せや愛情などのようにあいまいな形をしているものは、見る角度によってまったく見え方が違ってしまう。そして見る人の数だけ視点が違うわけなので、より複雑なものになる。ある女性の死によって浮かび上がった幸せのパズルの微妙なずれをたどりながら、新型コロナウイルスという言いようのない不安の中で繰り広げられるそれぞれの心の旅路を描いた演劇ユニット「iaku」の最新舞台「The last night recipe」は、せりふひとつひとつを観客の心の底に着実に沈めていくような静かな力強さと不安な現代社会ならではの浮遊感がないまぜになって、思わずあちこちに散らばっている自らの幸せのかけらを拾い集めたく
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