自分をきらいになりそうな人のために、10年叫んでいる。|三條 凛花
”妻”になったばかりのころ、毎日、遠回りして帰っていた。 家に帰りたくなかったからだ。 そうしていつしかずっしりと太ったビニール袋を両手に抱えて、手がちぎれそうな重たさに頭のなかで泣き言を言いながら、夕方の東京の街を静かに歩いていた。 道行く人たちは皆、都会のひとらしく、ヒールをかつかつと鳴らして足早に帰っていく。後から来たひとにもどんどん追い越されながら、一歩いっぽのろのろと歩いていた。 家路の途中にある横断歩道をわたれば済むはなしなのに、むだに歩道橋のうえを通ったり、ビオトープのように造られた小道に寄ったりして、少しでも家に着く時間を伸ばそうとしていた。 ビルの向こう
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