嘘が渦巻く底なし沼に引きずり込み合う複雑な人間関係が極上の舞台に…★劇評★【舞台=カメレオンズ・リップ(2021)】|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 嘘は人間の関係に大きな波紋を広げていくものだけど、もし登場人物のほとんどが嘘をついているかもしれないとしたら? しかも、噓をついていない人がいるかもしれなくて、だれが本当のことを言っているのかも混沌としてきたら? 波紋と波紋がぶつかってまたまた大きな波紋を広げていくはずで、もう収拾がつかなくなってくる。観客はだれか感情移入できる登場人物の言うことだけを信じていればいいのかというと、そんなに単純なものでもなくて、そこから先は底なし沼だ。一つの物語の中にこんなに嘘が盛り込まれているのも珍しいが、その嘘の中にどこか真実のようなものも見えてくるという高レベルな作劇の力もあって、もうこの物語の
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