私の個人主義 (講談社学術文庫 271)
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」、「中味と形式」、「文芸と道徳」など、魅力あふれる五つの講演を収録。
「漱石の個人主義思想は、個人に出発して、広い意味で、社会国家との関係を考えている。同時代の自然主義思想もまた個人主義思想であったが、自己の問題にとどまり、社会国家を思想的に究明することを怠った。しかるに漱石...
www.amazon.co.jp