憂いと詩情を湛えたせりふの合間や背景に生演奏のピアノで奏でられるベートーヴェンの楽曲がもうひとつの格調高い物語世界を私たちの心の中に創り出していく…★劇評★【舞台=Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋|阪 清和 (Kiyokazu Saka)
 音楽、特にクラシック音楽は、それをつくった人物、つまり作曲家がどんな想いでその曲を作ったか、当時どんな状況に置かれていたか、誰に捧げたかなど、人と曲にまつわるさまざまなエピソードをたくさん聞かされてから聴くと、何も知らずに聴くよりも何百倍も心に染みてくるものだ。舞台「Op.110 ベートーヴェン『不滅の恋人』への手紙」は、長年その存在が謎とされながら、研究者の近年の熱心な調査によって導き出されたある仮説に基づいて推測された「不滅の恋人」の本命とされる女性に焦点を当て、ベートーヴェンやその女性と何らかの関わり合いを持った人々が語るベートーヴェン像や不滅の恋人像が鮮やかに立ち上がる稀有な
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